「仕事は人を幸せにするためにするものだ」
私は以前、優良企業の経営者が多く参加しているという経営塾に参加しました。
会社をどう成功させるか、利益をどう出すか、目的は経営のやり方を学ぶためです。
商社で営業職を経験した20代後半であった私にとって、仕事とは売り上げをあげること。
拡大成長し、事業規模の大きな企業にすることがすべてだと思っていました。
月1回4時間、半年間で100万円という経営塾です。
経営とはなにをすれば良いのか全く分からなかった自分にとって、
経営塾の価格すらよく分かっていませんでした。
経営者が通う塾とはそんなものかなぁ、分割で支払えば良いかと・・・
経営塾に参加して驚きました。
その経営塾では、「経営はすべてにおいて理念が大事」としか言わない塾だったのです。
大勢の経営者が、
・なんのために会社を経営しているのか?
・わが社の事業は、誰のお役に立とうとしているのか?
・私の求めているものは何か?
・共に働いてくれる社員の人生にはどんな貢献をしたいと思っているのか?
それぞれが会社を経営する理由、意義を考え、理念として文章化しようとしていました。
そこで私は質問しました。
「会社は売り上げをあげてこそではないでしょうか?」
「一番にならないと意味がないのではないでしょうか?」と。
塾生と呼ばれる先輩経営者の一人が穏やかな表情で私に語り掛けてくれました。
「君は品の無い子だねぇ。売り上げを上げてどうしたいの?一番になって何を叶えたいの?」と。
私は絶句し、言葉に詰まりました。
売り上げを上げること。一番になることがGOAL、目的だったので
それ以上の答えを持っていなかったのです。
そこで私は先輩経営者に質問しました。
「あなたは何のために仕事をするのですか?」と。
その先輩経営者は、にこやかに答えてくれました。
「私はねぇ、仕事は人を幸せにするためにするものだと思っているんだ」
「目の前の人を幸せにするお手伝いをして、自分も幸せになれる。こんな良いことは他に無いよねぇ」
「だから、私にとって一番大切なことは共に働いてくれる社員さんとそのご家族なんだよ」
「自分一人では多くの人に貢献出来ないから仲間を必要としているんだ」
「その仲間と目的を共有し、共に幸せになっていくために理念をあらためて見出そうとしているんだよ」
「自分たちの出来ることで相手のお役に立てれば良いんだよ。それで売り上げも利益も上がり私たちも幸せになれるから」
事実、そこに集まっていらっしゃった先輩経営者の多くは、幸せそうに業績を上げていらっしゃる方ばかりでした。
その人たちから出てくる発言の多くは、
お陰様で・・・
社員のみんなが良くやってくれるので・・・
皆さんに感謝しています・・・
有難いです・・・
嬉しいです・・・
皆さん穏やかで幸せそうな表情をしていらっしゃいました。
このやりとりを経験し、私の仕事に対する価値観は大きくシフトしました。
なぜならば、商社の営業職時代は体育会よろしく気合で営業していたからです。
売り上げ目標を達成するためにお客様にお願いをする。
「月末には在庫を押し込む」なんて言葉も飛び交っていました。
成果はあがるものの、このスタイルで一生働くのは大変だなぁと暗に感じていました。
自分の都合でお客様にお願いをする。
そしてお客様に断られる。
それでも「そこを何とか!」とお願いをする。
用は、拒否されること・自分が否定されること・嫌がる相手を自分の都合で説得しようとすることを本能的に嫌がっていました。
そこに集まっていた先輩経営者の方々はまったく違う視点を私に与えてくれたのです。
「仕事は人を幸せにするものだ、自分の出来ることで相手のお役に立てれば良い」
「お役に立てるものならば、あなたから買いたいとお客様は言ってくださる」
「ありがとうは循環するんだよ。お客様からありがとうと言われる、言われた本人も嬉しくて感謝の気持ちが湧き上がりお客様にありがとうと言う」
これらの言葉を聞いて、私は売ることが嫌ではなくなりました。
「相手のお役に立つ」ことは、自分が評価され肯定されることとイコール(=)だと感じたのです。
「理念経営」とはそういうことか!と抱えていた葛藤が解放された瞬間でした。
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